名称
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
対象疾患
・比較的軽症な高血圧症
・糖尿病、蛋白尿、心不全、心筋梗塞の既往、脳循環不全など(腎臓や心臓、脳、血管などの臓器保護作用があるため)
作用機序
アンギオテンシンには、アンギオテンシンⅠとアンギオテンシンⅡの2種類がある。
このうちアンギオテンシンⅡは全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させる。アルドステロンはNaを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加します。
そこでアンギオテンシンⅠをアンギオテンシンⅡの変換する働きをもつACEを阻害することで、血管を広げて血圧が上がらないようにする。
副作用
・空咳、浮腫等
その他
ACE阻害薬はアルツハイマー病の発症リスクを高める可能性がある。
アルツハイマー病の原因ははっきりとは分かっていないが、仮説としてAβ(amyloid β-protein)の蓄積が原因ではないかといわれている。
Aβはアミノ酸の数によってAβ40とAβ42の2種類に分けることができる。
・Aβ40は遷移金属をキレートして活性酸素の発生を抑制する。(9割を占める)
・Aβ42は毒性がある。
ACEのN端はAβ42をAβ40に変えることが実験により明らかになった。
ACE阻害薬を服用することで毒性の強いAβ42の割合が増えてアルツハイマー病リスクが高まる可能性がある。
ACEはアンギオテンシンⅠからC端の2個のアミノ酸を切り離し、血圧上昇作用のあるアンギオテンシンⅡを産出する。
そこで、ACEのC端のみを特異的に阻害するACE阻害薬の開発が望ましい。
高血圧症はアルツハイマー病の危険因子なので、降圧治療は発症率を抑えるが、ACE阻害薬の服用はアルツハイマー病の罹患率を高めるという報告もあり、さらなる分析を行う必要がある。
(参考)
アンギオテンシン変換酵素の新しい顔:Aβ 変換酵素 生化学 第82巻 第12号