問題
営業保険料を決定する際に考慮すべき点のうち、標準責任準備金制度との関係について簡潔に説明せよ。(2020年度大問2(1)①)
標準責任準備金とは、保険業法第116条により、各保険会社が定める保険料水準にかかわらず、監督当局が保険会社の健全性維持と保険契約者保護の観点から定める責任準備金のことである。標準責任準備金の評価基礎率は、平成8年大蔵省告示第48号にて水準等が定められているが、営業保険料の計算基礎率は各社の判断で決定すべきものであり、必ずしも標準基礎率にあわせる必要はなく、十分性を検証したうえで、より低廉な営業保険料を各社設定すればよい。
ただし、標準基礎率に比べて低廉な保険料設定をした場合、保険期間の途中で積立負担が生じる。例えば、一時払の商品で、予定利率が標準利率よりも高い場合は、初期に大きな積立負担が生じる。また、平準払であっても貯蓄性商品で、保険料計算基礎率による営業保険料が標準基礎率による純保険料を下回る場合、前者の保険料を標準責任準備金の計算に用いなければならないため、初期の積立負担が大きくなる。
こうした積立負担は、同じ群団内で賄うことが望ましいが、難しい場合は、他の群団の剰余または内部留保を用いることになる。水準にもよるが、恒常的にこうした立替が発生することは望ましくない。初期投資として会社の内部留保で積立負担を賄うことに問題はないとする考え方もあるが、結果的に保険料の不足を生じる恐れもあるため、十分性の検証は慎重に行わなければならない。