再保険の目的

問題

再保険の活用目的のうち、「伝統的な目的」について簡潔に説明せよ。また、「非伝統的な目的」を2つ挙げ、それぞれについて項目を列挙せよ。(平成19年度大問2(2))

【伝統的目的】
再保険の「伝統的な目的」として以下の3つが挙げられる。
・保険金支払の変動が収益および資本に与える影響を軽減すること。
・元受会社にとって経験のないリスクが収益および資本に与える影響を軽減すること。
・再保険料率をもとに競争的な元受料率を提供すること。
この目的のために移軽されるリスクは死亡率・発生率などの保険引受リスクである。
(1)元受会社の保有限度額を超過する額を出再
元受会社は自己保有限度額を定めている。保険経営を安定させるために、自己保有限度額は、大数の法則が十分に機能し偶然の変動による収益および資本への影響を受容することができる水準に定められる。一方、会社の最高引受保険金額は、競合上の観点から定められる。この差額を再保険に付すことによって保険金支払の変動が収益および資本に与える影響を軽減することが可能となる。自己保有限度額は一律ではなく、標準体・条件体刑、さらには年齢群団別に定められることも多い。
(2)巨大災害などに起因する保険支払の集積リスクを移転
自己保有限度額の設定により均質でリスク発生が互いに独立した危険集団を形成していても、巨大災害が発生し広範囲に被害が生じた場合は、リスクの独立性は保たれず一時に多額の保険金支払が発生する可能性がある。巨大災害が発生した場合の集積リスクを移転し、保険経営の安定を図るために、一定額以上の保険金支払が発生することを再保険事故と定義する再保険契約が活用される。
(3)経験のない保険引受リスクを移転
元受会社は、市場の要請等により、保有したことのない保険引受リスクに晒されることがある。新しい給付を提供する新商品を開発する場合やリスク細分化保険を発売する場合が.典型的な事例である。このような場合、死亡率・発生率は、国民の統計または他の市場で活用されているものを必要に応じ修正して使用することが多い。このようにして作成された死亡率・発生率は、常にミスプライジングの可能性を包合している。このリスクの顕在化が収益および資本に与える影響を元受会社にとって受容できる範囲内に収まるようにリスクの一定割合を出再することが行われる。また、再保険金杜の情報をもとに新商品を開発した場合には、経験のない保険引受リスクを移転するという理由に加え、その再保険金杜への報酬的な意味合いにより、出再することも多く見られる。
(4)再保険料率をもとに競争的な元受料率を提供
一般的に、再保険金杜の提供する再保険料率は、元受会社がプライシングで採用する死亡率・発生率よりも低い。また、条件体の評点についても再保険金杜の方が競争力のある査定を行うことが多い。元受会社では、保険引受リスクを保有する代わりに低廉な再保険料を支払うことにより、顧客に競争的な保険料率を提供することができる。我が国においても、任意再保険を活用することで、条件体契約で競争的な評点を提供することが広く行われている。

【非伝統的な目的】
(1)財務諸表の改善
新契約費の抑制、収益の安定、収益認識のタイミシグの変更、ソルベンシーマージン比率の改善、ROE・IRR等の収益率の向上
(2)特定のビジネスコールの達成
増資の抑制、課税所得の平準化、格付けの引上げ・安定、円滑な買収・株式会社化

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