問題
生命生命保険会計の特徴である「保険期間の超長期性」「群団性」、「保険料構成要素の多様性」について、それぞれ簡潔に説明せよ。
【超長期性】
・一般事業会社では一般に仕入から販売まで短期間で完結するために週・月単位で損益の測定が可能だが、生命保険契約は契約の全期間に通じて生じる一定の偶発事故に対して保険給付の支払を約しており、かつ契約は数年から数十年にわたる。このため、生命保険会社は超長期にわたって適正な支払能力の確保が必要であり、この点から資産評価の保守性と支払準備のための準備金の充実という特性が生じる。
・資産評価の方法は、支払能力確保の観点からは、不測の事態においても保険給付を行いうるという点で、清算価値が望ましい。
・支払準備のための準備金の充実を図るという点から、期間損益を明確にさせることが必ずしも可能ということにならない。支払準備のための準備金は、将来の状況を慎重に予測して評価する必要があり、この結果当期の費用(準備金への繰入額)は通常の方式による費用の評価とは大きく異なることもありうる。
・支払準備のための準備金のうち、大宗を占めるものが責任準備金であり、これら準備金が負債の部の大部分を占めていることや、これらの計算の評価性も生命保険会計の特徴といえる。
・支払能力の確保と期間損益の把握は裏腹の関係にあり、支払能力の評価により期間損益の評価(剰余)も異なる。真の剰余は群団の消滅まで確定しない。
【群団性】
・保険制度は大数の法則を前提としており、一定の群団を目的毎に設定し、群団間の公平性を図りつつ支払能力の確保を図っている。
・期間損益の適正化および税務等の要請から個々の契約に注目した経理処理が求められることもあるが、特に責任準備金の評価においてこの群団性を前提とした解釈をすることが必要である。
・契約件数が極端に少ない場合、群団として成立させることには無理があり、他の保険に統合する等の工夫が必要であろう。
・事業費は契約初年度と次年度以降で水準が大きく異なるため、収益・費用の対応を目的とした会計では、新契約の世代毎に群団を分け、チルメル式等の考慮を行うこともある。しかし、収益・費用の対応を目的とした会計であっても。世代をまたいだ1つの群団として維持・管理する場合は必ずしもこの種の調整を行う必要はなく、世代間で一種の相互扶助を行いながら支払能力の確保を図っていると解釈される。
【保険料構成要素の多様性】
・一般的に、保険料計算基礎には3つの要素(予定利率、予定死亡率、予定事業費率)があり、平準純保険料方式を採用している。
・この前提から、収益である保険料を費用に対応させる方法は様々に考えることができるが、それぞれの方法は、いずれも一定の目的に応じたものであり、普遍的に正しい方法があるわけではない。
・生命保険会計の剰余は損益計算書において知ることができるが、経営目的からも保険会社を監督する立場からも単に会社全体の剰余を知るだけでは不十分である。多様な計算基礎率の妥当性や契約者配当の公平性等を確保するためにも、剰余を利源別に分析することが必要となる。