問題
標準責任準備金制度の目的及び概要について、簡潔に説明しなさい。なお、概要については今後新たに締結する保険契約に対して適用される制度のみを解答すればよい。
【目的】
平成8年4月に保険業法が改正され、商品・価格の自由度がより高まり、競争が促進されるようになった。ただし、実質的な価格は事後に確定する保険の性格から、確固たる健全性の仕組みを併せて構築しておかなければ、却って消費者保護を図れなくなる可能性がある。このため、保険会社の健全性を高め、支払能力を確保する視点から、長期の保険契約で内閣府令が定めるもの(標準責任準備金対象契約)については、内閣総理大臣(金融庁長官に委任)が責任準備金の積立方法、計算基礎率水準について必要な定めを行うことができるとした、所謂「標準責任準備金」制度が設けられた。
【概要】
標準責任準備金制度とは、内閣府令で定める「長期の保険契約」(標準責任準備金対象契約)について、金融庁長官が「責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準」について必要な定めをすることができる、というものである。標準責任準備金対象契約は以下の契約を除くものである。
・責任準備金が特別勘定に属する財産の価額により変動する保険契約であって、保険金等の額を最低保証していない保険契約
・保険料積立金及び払戻積立金を積み立てない保険契約、保険料積立金を計算しない保険契約
・保険約款において、保険会社が責任準備金及び保険料の計算の基礎となる予定利率を変更できる旨を約してある保険契約(保険約款において、当該保険契約の締結時の標準責任準備金の計算の基礎となるべき予定利率を超える利率を最低保証している保険契約を除く。)
・外国通貨(米国通貨建、豪州通貨建を除く)をもって保険金、返戻金その他給付金の額を表示する保険契約
【積立方式や係数など】
・積立方式:平準純保険料式
・予定死亡率:公益社団法人日本アクチュアリー会が作成し、金融庁長官が検証したもの(生保標準生命表2018(死亡保険用)、生保標準生命表2007(年金開始後用)または第三分野標準生命表2018)
ただし、当該予定死亡率以外の予定死亡率を責任準備金の計算の基礎として用いることが適当であると認められる保険契約を除く。
・予定利率:保険料の払方や契約特性に応じて「第1号保険契約」、「第2号保険契約」、「第1号保険契約及び第2号保険契約以外の契約」に分けて設定された計算方式により定まる。
・第三分野商品の予定発生率、予定解約率など、共通の定めのない基礎率についても、制度の主旨に鑑み、保守的な設定が望まれる。
・契約時の評価基礎率を用いて評価するロック・イン方式である。
・計算した保険料積立金の額が契約者価額を下回る場合には、契約者価額を保険料積立金とする。
・特別勘定を設けた保険契約であって、保険金等の額を最低保証している契約については、一般勘定の責任準備金は、原則として、一般勘定における最低保証に係る保険金等の支出現価から一般勘定における最低保証に係る純保険料の収入現価を控除する標準的方式により算出した額とする。ただし、標準的方式により計算される責任準備金の債務履行を担保する水準と同様であることが認められる場合は、標準的方式に替えて、代表的方式を使用することができる。特別勘定の責任準備金は収支の残高とする。
・生命保険会社の業務又は財産の状況及び保険契約の特性等に照らし特別の事情がある場合には、標準責任準備金を下回る積立が認められている。ただし、この場合においても、保険料積立金及び払戻積立金の額は、保険数理に基づき、合理的かつ妥当なものでなければならない。