責任準備金対応債券

問題

「責任準備金対応債券」の概要について、簡潔に説明しなさい。解答にあたっては、ある小区分でデュレーション・マッチングを満たさなくなった場合の取扱についても言及すること。

【責任準備金対応債券の概要】
保険会社の負債の大部分を占める責任準備金は、長期の債務であっても契約時に固定された予定利率で評価される。このため、「その他有価証券」として債券等の資産側のみを時価評価した場合は、財務諸表上、純資産の額が大きく変動し、デュレーション・マッチングにより資産・負債の金利変動リスクを適切に管理していても、真の財務状況が適切に反映されない恐れがある。一方、「満期保有目的の債券」に区分すれば、評価額を計上する必要はないが、売却が制限されることから、目標デュレーションの達成が困難となる・

【責任準備金対応債券の要件】
・リスク管理を適切に行うための管理・資産運用方針等の策定
・管理・資産運用方針等を遵守する体制の整備
・小区分の設定と管理
・デュレーション・マッチングの有効性の判定と定期的検証
・責任準備金対応債券の範囲

責任準備金対応債券は、責任準備金の残存年数や保険商品などにより作成された小区分ごとに管理することとされており、その小区分ごとにD(L)=k×D(A)(ただし、0.8≦k≦1.25)という基準を満たす必要がある。ここで、D(L)は責任準備金のデュレーション、D(A)は責任準備金対応債券のデュレーションである。

【責任準備金対応債券の評価方法】
責任準備金対応債券は「満期保有目的の債券」と同様、償却原価法で資産評価され、減損の会計処理も適用される。

【デュレーション・マッチングを満たさなくなった時の取扱】
債権の発行者の信用状態の著しい悪化や税法上の優遇処置の廃止等に起因する場合を除き、目標デュレーション達成以外の目的による責任準備金対応債券の売却、保有目的の変更又は合理的な理由のない小区分の変更が行われた場合には、該当する小区分のすべての責任準備金対応債券を変更時の償却原価をもって、その他有価証券に振り替えなければならない。
また、ある小区分でデュレーション・マッチングを満たさなくなった場合にも、当該小区分に属するすべての責任準備金対応債券を変更時の償却原価をもって、その他有価証券に振り替えなければならない。
ただし、予期せぬ解約率の大幅な上昇等の合理的な予想ができなかった要因でデュレーション・マッチングの基準を満たさなくなった場合には、当該小区分の属するすべての責任準備金対応債券を、変更時の償却原価をもって満期保有目的債券に振り替えることができる。
上記振替を行った場合、振替を行った事業年度を含む二事業年度においては、取得した債券を当該小区分に分類することはできなくなる。また、この間において当該小区分を含む小区分の範囲を変更することはできなくなる。

【その他】
・責任準備金対応債券を保有している場合は、財務諸表において「責任準備金対応債券に関する時価情報」「リスクの管理方針の概要」等の注記をしなければならない。
・ソルベンシー・マージン比率の計算においては、分子(マージン)には含み損益は算入されない。また、分母(リスク)の価格変動等リスク相当額のリスク係数は1%となっている。
・実質資産負債差額の計算には、責任準備金対応債券と「満期保有目的の債券」の含み損益が算入される。また、ソルベンシー・マージン比率が0%以上で実質資産負債差額が負の場合であっても、実質資産負債差額から、責任準備金対応債券と「満期保有目的の債券」の含み損益を控除した金額が正であり、かつ流動性資産が確保されている場合には、原則として「保険金等の支払能力の充実の状況に係る区分」の第三区分の命令(期限を付した業務の全部又は一部の停止の命令)は発出されない。
・責任準備金対応債券を保有している場合は、財務諸表において「責任準備金対応債券に関する時価情報」「リスクの管理方針の概要」等の注記をしなければならない。

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