保険料率の細分化

問題

(1)保険料率の細分化の際に考慮すべき「公平性」について説明しなさい。(2018年度大問3(2)①)
(2)料率区分要素が満たすべき要件について簡潔に説明しなさい。(平成25年度大問2(2))

(1)保険制度を維持するためには、保険料の負担は被保険者間において公平であることが要請される。理論的には、同一の保険料で保障される被保険者集団は同一の危険性を有するべきであることから、適切なリスク区分に応じて料率が区分されるべきであり、このような「保険技術的公平性」を確保する観点から保険料の細分化は行われる。ただし、細分化によってもリスクの均質化が完全には不可能なことから、保険技術的公平性は実務においては完全には達成されない点に留意する必要がある。
また、保険料負担能力の面からの社会的な容認可能性としての「社会的公平性」についても留意する必要がある。保険技術的公平性の観点から細分化をすすめ、適切な料率設定を行ったとしても、一部の契約者に対して高すぎる保険料を課すなど、社会的公平性を著しく阻害するものであれば、必ずしも容認されない場合もあり、社会的コンセンサスに合致した料率設定であるかといった観点からの検討も不可欠である。これは私保険が社会保険を補完する役割を担う公共性の高い事業であることからの要請である。
このように保険事業が社会的・公共性に基づいて行われていることを踏まえ、社会的公平性を確保したうえで、保険技術的公平性の観点から適切に細分化を行い、料率区分を設定する必要がある。

(2)
【同質性】
料率を区分することで、結果的に被保険者集団の同質性をもたらすものであること。
【分離の必然性】
その要素を料率区分に使用することによって、実質的にリスクのレベルに差異をもたらすものであること。
【測定可能性】
実質的に測定可能であり、信頼できるものであること。また、そのための費用があまりかからないこと。
【定義が明確であること】
そのリスク区分に属することが明確に定義されること。
【将来に向けて予測可能であること】
保険加入時点の情報に基づいて保険料率を決定していることから、将来に向けて予測可能な料率区分であること。
【危険を減少させるインセンティブとなること】
その要素の使用が、被保険者にリスクを減少させるインセンティブをもたらすこと。
【制御可能性】
被保険者にとって意図的にコントロールできるリスク要素であること。制御できない区分は不公平と考えられる傾向がある。
【社会的に容認されること】
料率区分が社会的に容認されるようなものであること。

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