問題
ヘッジ会計の概要を説明せよ。(平成25年度大問1(2))
【前提】
ヘッジ取引は、デリバティブ等のヘッジ手段を用いて有価証券等のヘッジ対象のリスクを減殺することを目的とするが、減殺するリスクにより、相場変動を相殺するヘッジ取引とキャッシュフローを固定するヘッジ取引の2つに分けることができる。金融商品の時価会計ではデリバティブ取引は時価評価が原則だが、ヘッジ取引においてヘッジ対象の評価損益が損益計上されていない場合には、ヘッジ手段であるデリバティブ取引の評価損益のみが損益計上され、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益計上時期がずれてしまう。このため、ヘッジ取引の効果を財務諸表に適切に反映させるために損益の計上時期を一致させる例外的な会計手法としてヘッジ会計が認められている。
【ヘッジ会計の適用条件】
・リスク管理に関する内部規定の作成、リスク管理の内部統制の整備・運用、リスク管理方針の文書化
・事前テストによるヘッジ対象リスク、ヘッジ手法、ヘッジ有効性の評価方法の明確化
・事後テストとして最低6カ月に1度ヘッジ有効性の評価。
【ヘッジ会計の方法】
ヘッジ会計の方法には「繰延ヘッジ」と「時価ヘッジ」がある。
繰延ヘッジは、時価評価されたヘッジ手段の損益または評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる。
時価ヘッジは、ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることができる場合に、当該資産又は負債に係る損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する。
繰延ヘッジを原則とするが「その他有価証券」を対象とする場合は自己資本が相場変動の影響を受けてしまうため、時価ヘッジも認められる。
【その他】
・ヘッジ対象となる資産又は負債が相場変動等による損失の可能性にさらされており、かつ、その相場変動に対して同様に反応することが予想されている場合は、包括ヘッジを適用することが可能である。
・ヘッジ会計の要件を満たしており、想定元本、利息の受払条件、契約期間がヘッジ対象の資産又は負債とほぼ同一であるような金利スワップは、時価評価せずに金銭の受払の純額を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することが認められている。