区分経理の意義

問題

区分経理の意義および活用方法について、活用時の留意点に触れながら簡潔に説明しなさい。(平成28年度大問2(1))

【区分経理設定の意義】
・生命保険会社においては、利益還元の公平性・透明性の確保、保険種類相互間の内部補助の遮断、事業運営の効率化、商品設計や価格設定面での創意工夫などを図る観点から、一般勘定について保険商品の特性に応じた区分経理を行うことが重要である。
・各生命保険会社において自己責任原則のもと、保険経理の透明性、保険契約者間の公平性確保等の観点から、適切な区分経理が行われる必要がある。
・また、区分経理を導入するに当たっては、資産の配分方法、含み損益の配賦方法等について、アセット・シェア等に基づき適切に配分方法が定められていることが重要である。
・なお、区分経理は保険計理人の確認業務(責任準備金に関する事項、剰余金の分配または契約者配当に関する事項)にも関連している。

【活用方法および留意点】
○利益還元の公平性・透明性の確保
・区分経理を行うことで、区分毎の損益の状況を明確にすることが可能となるため、利益還元の公平性・透明性を確保することができる。特に、有配当区分における契約者への配当の公平性・透明性を確保することができる。特に、有配当区分における契約者への配当の公平性・透明性を確保するために、有配当保険・無配当契約を区分するといった適切な区分経理の実施は重要である。
・法令では、剰余金の分配または契約者配当の計算は、「保険契約の特性に応じて設定した区分ごとに」計算することが規定されており、また、生命保険会社の保険計理人の実務基準では、公正・衡平な配当の確認における商品区分単位の配当可能財源の確認は「区分経理の商品区分ごとに」行うことと規定されている。

○保険種類相互間の内部補助の遮断
・商品区分はセルフサポートが基本であり、その中で保険料および責任準備金の十分性を満たす必要がある。言い換えれば、区分毎の十分性の確保が、契約者間の公平性の確保および会社の健全性の確保につながる。特に、生命保険会社の保険計理人の実務基準では、責任準備金の十分性確認において区分経理の商品区分毎に将来収支分析を行うことと規定されている。
・ただし、区分経理は現状ではあくまでも内部管理会計であることもあり、最終的には全体で支払能力を裏付けていることにも留意する。
・商品区分の規模が小さくなると、分散効果の低下により毎年の保険収支が不安定化したり資産運用効率が低下したりすることから、安定的・効率的な保険制度の運営が難しくなる。このことから、無暗・頻繁な区分の変更は当然避けられるべきではあるが、一方、発売間もない新商品の区分や販売停止して長期間経つなどして保有が減少した商品の区分など、小さすぎる区分は、他の商品区分への統合も検討するなど、区分の更新を検討する必要がある。また、このような目的のために厳格な賃借・出資を前提として全社区分を活用することも考えられる。

○事業運営の効率化
・区分経理を行うことで、区分毎の効率性を把握することが可能となり、不採算区分の事業規模縮小・撤退などを検討する上での有効な判断材料となる。さらに、その区分の特性を把握でき、手数料などの販売政策、経営資源投入などの経営戦略の策定が可能となる。
・商品に対応する資産の運用特性に沿った区分とすることで、資産運用の効率性・資産運用マッチングの向上や責任準備金対応債券の効果的な運用など、ALMを効果的に行うことができる。
・区分経理を行う上で算定・利用される保険関係収支などの各種の情報やインフラはリスク管理にも利用することができる。
・分析を行う上でも経営上の諸作を行う上でも区分経理が有効に働くように、商品特性・資産運用特性などに沿った商品区分とすることが必要である。例えば、配当の有無・保証性または貯蓄性・外貨建かどうかなどによって区分することは必要であろう。
・ただし、区分経理の商品区分に基づく分析だけでなく、保険種類毎や販売チャネル毎など、更に細分化した分析や、単年度損益に加え、エンベディッドバリューや新契約価値などの評価手法を併用するなど、多面的な分析を行った上で経営判断に約立てていくことが重要である。
・区分毎の効率性を把握するためには事業費の配賦が不可欠であるが、間接費用の詳細な配賦は一般的に困難である。これらはあくまでも配賦によって得られた数字であり、常に精度改善の余地を持つことに留意が必要である。
・また、一般に、細分化には情報収集コスト・インフラ整備が必要であり、費用対効果に留意が必要である。
・区分経理を効果的に経営に反映するためにも、経営陣の区分経理に対する理解促進を図ること・アクチュアリー自身の説明能力の向上を図ることが必要である。

○商品設計や価格設定面での創意工夫などを図る
・例えば、独立した商品区分及び資産区分を設定することにより、利率変動型商品や外貨建商品などのような資産運用結果を契約者価額に反映させた商品が可能となる。
・また、他の金融商品に競合する商品を開発する場合には、資産区分の資産運用方針に基づき予定利率を定め、必要ならば解約返戻金を市場価格調整型とすることで、リスクコントロールをしつつ、魅力ある商品設計が可能になる。
・利源分析を区分毎に行うことで、計算基礎率の妥当性のチェックなどにより詳細な分析を行うこともでき、これを新商品開発時の計算基礎率に反映することができる。特に、商品区分別の事業費を把握し、それを保険種類別・販売チャネル別に按分することでそれぞれの保険種類・販売チャネルに必要な予定事業費率を把握することができるようになる。

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