MVA機能を有する保険

問題

$MVA_{t+\frac{\theta}{12}}=1-(\frac{1+i_1}{1+i_2+\alpha})^{n-\frac{12t+\theta}{12}}$
$i_1$ : 契約時の利率
$i_2$ : 解約時の利率
$\alpha$ : タイムラグに対応するマージン
$n$ : 保険期間(年数)
$t$ : 経過年数
$\theta$ : 経過月数

MVAの概要、意義及び$\alpha$、$i_2$の設定における留意点について説明せよ。(2019年度大問2(1))

【概要・意義】
・MVAとは、契約時の金利と解約時の金利の差を解約返戻金額の算出に反映させる機能である。
MVAにより、金利上昇時は解約返戻金が下落し、逆に金利下落時は解約返戻金が上昇する。
この意義は、解約が起こった時点の金利に基づき解約返戻金額を調整することで資産(債券)の流動化に伴う売却損が発生するリスクを保険契約者に移転することである。MVAを解約控除の一種ととらえるならば、投資上の不利益を補うために用いられると解釈される。
・資産売却によるリスクを保険契約者に移転することに加え、急激な金利上昇時に多量の解約が発生することを防ぐためにもMVAが用いられる。
・会社にとっては金利上昇局面における資産売却損が発生するリスクや流動性リスクから解放されるというメリットがあるとともに、リスクが軽減されることで、保険契約者に対して予定利率を高めに設定することができる。
・MVAを有する商品は保険業法第300条の2に規定する「特区低保険契約」に該当する。このため、販売・勧誘に当たっては、顧客属性などに即した適正な販売・勧誘の履行を確保することが必要とされている。

【α設定の留意点】
・解約時に適用する利率($i_2$)は、通常、当日の市中金利でなく、例えば前月の市中金利等をもとに設定し、一定期間適用される。このため、保険会社が利率を設定する時期と保険契約者が解約を決断する時期にタイムラグが生じる。このタイムラグに対するマージンとしてαが設定される。
・保険会社にとっては、αを大きく設定する方が保守的であるが、一方で解約する者に対して高い負担を求めることになる。また、αは金利上昇時も低下時も一律に適用される。
・金利上昇時における解約の発生に対応するという目的を踏まえつつ、過度に保守的な設定とならないように留意することが望ましい。

【$i_2$設定の留意点】
・$i_2$ を当日の市中金利を反映して毎日更新することは、実務上大きな負荷がかかる。したがって、通常、前月の市中金利等を基に設定し、一定期間(例えば一カ月間)適用する。
・しかし、その場合、保険会社が$i_2$ を設定する時期と保険契約者が解約を決断する時期のタイムラグが生じることに留意しなければならない。
・$i_2$ の設定をする際、裏付けとなる資産価格の変動を反映するという観点から、残存期間に対応する金利を用いることが考えられる。この場合、金利変動だけでなく、金利の期間構造の影響も解約返戻金に反映させることになり、契約者からは理解されにくくなる。
・一方、$i_2$ を保険期間に対応する利率を用いることも考えられる。その時点で加入した契約に適用される利率と同じとなるため、契約者からは理解されやすくなるが、金利の期間構造が順イールドの場合は、(より高い利率を参照することにより)契約者に不利な取扱いとなる。
・上記のメリット・デメリットを踏まえ、また、想定する契約者の理解度(個人か法人かなど)等も考慮し、対応を検討する必要がある。
・不当に解約返戻金額をコントロールしないように、契約者の保護の観点等から、恣意性のない合理的なルールを定める必要がある。

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