解約率の特性

問題

商品毎収益検証のシナリオの設定において考慮すべき解約率の特性に関して、死亡率および金利の特性と異なる点を簡潔に説明しなさい。(平成27年度大問2(1))

①解約は、契約者からの一方的通知で足るので、事後的経営管理が困難である。
・保険契約は保険契約者と保険者との双務契約でありながら、保険者の側に解約権はなく、契約者側からの一方的通知によって契約の解約が行われるため、どの様な政策方針を事後的に打ち立てようとも解約の防止には限度があり、事後的にコントロール可能な部分が少ない。
・投資政策の変更等によりある程度の事後的コントロールが可能な金利に関するシナリオ、もしくは契約者の意思でコントロールすることが一般に不可能であり、その発生が比較的安定している死亡率との特性の相違が存在する。

②解約は、他のシナリオに連動していると考えられる。
・特に貯蓄性の高い商品の解約は、他の金融商品との魅力の差により誘引される。例えば、市場金利が上昇し、生命保険商品の付与利率がこれに追随できなければ、解約の増加が予測される。
・ただし、低金利下においても、経済状況の悪化、金融機関への不満・不安等による解約増加も考えられることから、解約率は金利シナリオに連動していると考えられるものの、そのモデル化およびシナリオの設定は非常に困難である。
・また、健康状態に自信のある者は安易に解約する傾向にあると考えられ、残存する被保険者集 団の平均的死亡率は悪化するため、解約は死亡率のシナリオに影響することもある。

③解約率の変動幅は、死亡率および金利の変動幅より大きく、投資運用収益に大きく影響すると予想される。
・解約率は通常数パーセントのオーダーで変動するため、通常千分の1のオーダーである死亡率 および金利の変動幅よりも大きく、解約率の変動により生じるキャッシュフローが会社の投資運用収益に与える影響は大きいと考えられる。

④商品の特性が解約を誘引する。
商品の特性により解約が誘引される例として、以下の例が挙げられる。
・単純に既払込保険料と解約返戻金を比較し、後者が前者を上回ったときに解約が誘引される可能性がある。
・ある時点で解約返戻金が死亡保険金を上回る場合、死亡事故が発生すると死亡保険金ではなく解約返戻金が請求され、解約率が増加する可能性がある。
・死亡給付や生存給付に最低保証がある変額商品において、特別勘定のインデックスが下落した場合、最低保証を期待して解約率が減少することが考えられる。

⑤解約率の一定方向への変動が、収益性・健全性を一定方向へ変動させるとは限らない。
・例えば、保険料の計算基礎率に予定解約率を入れた場合や、保険料計算基礎の予定利率を責任準備金計算基礎の予定利率よりも高めに設定した場合などにおいて、解約率の増大は収益性・ 健全性を改善する方向に働く可能性があるなど、生命保険商品の特性・設計によっては、解約率の増大が必ずしも収益性・健全性の悪化につながらないこともある。
・死亡最低保障がある変額保険で、特別勘定のインデックスが下降した場合、死亡保障を期待して継続率が上がるケースがある。

タイトルとURLをコピーしました