責任準備金の特性

問題

支払備金についてその責任準備金の会計上の特性を説明せよ。(平成7年度大問1(2)、平成25年度大問2(1)改題)

【長期性による特徴】
生命保険会計の長期性により、責任準備金は、会計の目的に応じて評価されるものである。例えば、長期の現価計算の利率に何を用いるか、死亡率をいかに評価するかといった問題があり、これにより、責任準備金の評価の内容・水準は異なる。
評価に幅があることから、会計方式により責任準備金の評価は異なる。契約者保護を主眼とする業法会計においては、保守的な負債額の確定が主目的であり、その結果として剰余は企業活動の価値や投下資本からのリターンが考慮されにくい面がある。一方、期間損益の把握を主目的とした会計においては、毎年の剰余を適切に算出するのに適した責任準備金の評価を行うこととなる。

【群団性】
責任準備金は群団を前提とした保険数理上の概念であり、個々の契約の持分として積立てるのではなく、群団全体としての支払能力確保のため、事業年度末に責任準備金の評価を行い積み立てるものである。すなわち、大数の法則が成立しうる保険群団に対して、支払能力の確保という観点を重視し、事業年度末において責任準備金の評価を行う。個別契約毎に分解されるものではない。
このように保険機能を働かせるに足る保険群団という概念が必要であることから、契約の件数が極端に少ない場合には群団として独立させることはできず、他の保険に統合する、数年の経験を累積させるなどの工夫が必要である。
世代間をまたぐ群団性について考えた場合、生命保険の経営にかかる事業費は初年度(新契約費)と翌年度以降で水準が異なるため、収益・費用の対応を目的とした会計では、新契約の各世代毎に群団を分け、チルメル式等の考慮を行うこともある。
最終的には責任準備金積立は支払能力確保を目的として行われることから、世代間の一種の相互扶助を行いながら積み立てることになり、個別契約単位に分解できない。
なお、事業費面以外でも、投資年度別の収益把握法をとらない場合の利率面、選択効果により世代間の死亡率が異なる場合等についても、群団で考える必要がある。

【基礎率の評価性】責任準備金は、将来の支払能力確保という観点から評価されることから、その計算基礎率は必ずしも保険料計算基礎率と同一ではない。例えば、現時点で将来の保険事故発生率が高くなることが相当に確実であると予想されるならば、その見込まれる発生率を考慮することが必要であろう。

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