問題
責任準備金評価の一つに「相当程度の確度で保険契約上の債務を将来にわたり遂行できるか」があるが、この「相当程度の確度」の考え方およびその確度を高める方策について述べよ。(平成11年度大問2(1))
【相当程度の確度の考え方】
生命保険会計の特徴である長期性により、100%の確率で将来の保険金支払を保証することはできない。このため、ある程度以上の確度でしか支払能力は担保できないが、その確度をどの程度とするのかが重要であり、責任準備金評価に際しては「相当程度の確度」を確保する視点が求められる。
【相当程度の確度を高める方法】
○責任準備金の評価を保守的に行うこと
基礎率について、変動や将来の悪化の可能性を考慮して、保守的に設定することが考えられる。また、積立方式についても、保守的な方式を用いることが考えられる。ただし、会計上の制約から、この方策単独で確度を高めることは困難である。
○各評価時点で定めた基礎率を既契約にも適用すること
責任準備金評価基礎率を契約時に固定(Lock-In)せず、各評価時点において定めた基礎率を既契約にも適用することが考えられる。
Lock-In方式に立つ場合であっても、例えば、将来の運用利回りが恒常的に旧の責任準備金利率を下回り、保険料中のバッファーでそれを吸収できないことが見込まれるときは、新の責任準備金利率を適用するか、または、不足額を別の形で準備する必要があろう。
キャッシュフロー・テストにより、資産負債の両面から検証を行うことも有用である。
○ソルベンシー・マージンで支払能力強化すること
相当程度の確度を、責任準備金とそれ以外のソルベンシー・マージンとで役割分担させ、より支払能力を強化することが考えられる。ある程度の環境変化は責任準備金で対応するものの、それ以上の環境変化はソルベンシー・マージンで対応するという考え方である。ソルベンシー・マージンを充実させることにより、「責任準備金+ソルベンシー・マージン」をもって確度を高める。