問題
内部管理会計の意義と必要性について説明せよ。(平成15年度大問3(1))
○現行会計の特性
(1)SAP会計→ソルベンシー確保を目的とした監督会計
生命保険会社は、監督当局が定めた生命保険会計基準(法定)に基づいて事業内容を監督当局に報告している。監督当局の眼は、生命保険会社の収益性より、継続的に事業を行うことができるかどうかに焦点が当てられている。法定会計においては、責任準備金の保守的な積立や初年度のコミッションなどの負担により、新契約から得られる収益が初年度に大きなマイナスとなり、次年度以降の収益でそれをカバーするような収益構造となる。法定会計は、その会計上の目的が「保険会社の健全性」に主眼を置いていること、そして生命保険契約の長期性とその収益の発生構造の特殊性から、保険契約の新契約獲得および解約失効などによる脱退と、その法定会計上の発生構造が一致しないため、収益性の認識という点では望ましくない。
(2)GAAP会計→一般投資家等への会計情報の提供(米国の例)
「US-GAAP」では、利益をその費用負担と対応する会計手法として確立しており、収益は保険料や保険金などの主要要素に基づき、契約期間に亘って平準的に認識する方法が取り入れられている。
○現行会計の限界
現行会計は必ずしも経営者の経営判断に約立つものとは限らない。
・長期の評価性債務を抱える生命保険会社の監督会計は、保守的な責任準備金の採用等で支払能力の確保を重視する。この主旨からは、自由化進展の環境の中、今後、保守性が弱まるとは考えにくい。自由化の環境変化は、高度の経営判断を要することになり、現在の経営成績の状況を適切に表示する期間損益を的確に把握しうる会計制度が必要となる。
・生保会社を巡る事業環境の急激な変化の中で、「単一の価格設定」「均等な資産運用」といった従来の一般勘定における一括管理の手法が保険種類によっては、ロスが多く、フットワークの鈍いものとなっており、リスク管理の観点や利用者ニーズへの対応の観点から様々な課題が生じている。
・GAAP会計では、それが経済的に安定した時代に生まれたシステムであったため、ロック・イン原則による硬直性や、理論的には収入保険料の一定割合を当期利益として認識しようとするため資本利益率等の目標達成状況の測定が困難などの問題が挙げられる。
○要求される属性
・経営成績や期間損益の的確な把握
・収支構造の詳細な把握
・結果が上層部に理解しやすいもの