問題
(1)優良体保険において優良体適格か否かを判定する方法のうち、「オール・オア・ナッシング法」と「ポイント・システム」について、それぞれ簡潔に説明しなさい。(平成27年度大問1(5))
(2)個人保険において優良体保険を導入するにあたって留意すべき事項を挙げ、それぞれについて説明せよ。(平成26年度大問2(2))
(1)【オール・オア・ナッシン】
・各リスク・ファクターに境界線を設定し、全てのリスク・ファクターが境界内にある場合に優良体適格と判定する方法。
・判定が簡便である一方で、ほとんどのリスク・ファクターが良好でも要件を満たさないファクターが一つでもあれば優良体と判定されない。
・年齢、性別毎に境界値を設定する修正オール・オア・ナッシング法が一般的。
【ポイント・システム】
・各リスク・ファクターに相対的重要度を示すポイントを設定し、ポイントの合計が一定数以下の場合に優良体適格と判定する方法。
・一部のリスク・ファクターが望ましくない場合でも優良体となることが可能であり、合計ポイント数の基準を変更することにより割引率や優良体割合の調整が容易。
(2)【優良体の予想割合と実際の割合】
保険申込者は、優良体基準を満たすなら加入するが、満たさない場合は契約しないという傾向があるため、優良体の予想割合が医的には妥当な水準であっても、実際の優良体割合の方が高くなることがある。
この場合、優良体、残余標準体ともに死亡率が適切に設定されていれば問題はないが、死亡率誤差を完全に回避することは困難である。
標準体死亡率を所与として、「優良体の割合」と「優良体死亡率に対する残余標準体死亡率の比率(超過死亡指数)」から、優良体及び残余標準体の死亡率を決定する場合、優良体死亡率が実際よりも低く設定されると、残余標準体死亡率が実際よりも高く設定されることになり、標準体全体としてはバランスがとれることになるが、実際の優良体割合が予想と大きく異なると、このような調整は機能しなくなる。
【優良体保険の導入による既契約への影響】
既契約のうちリスクの低い契約は優良体保険に転換する傾向があるため、既契約はリスクの高い保険契約群団となる可能性がある。
これは、自社が優良体保険を導入しない場合でも、他社が優良体保険を販売していれば同様の影響がある。
【複数の会社が優良体保険を販売する場合の影響】
A 社と B 社が異なる判定基準を設定し、それに伴って料率が異なる優良体保険を発売した場合、優良体の割合及び死亡率に影響を与えることがある。厳しい判定基準で料率の低い優良体保険 A 社では、その基準に合致する申込者は、B 社よりもそちらを選択する可能性がある。
この場合、より緩い判定基準の B 社の優良体保険では、A 社の判定基準は満たさないが、B 社の基準を満たすものが加入することになるため、実際の死亡率は想定より高くなると考えられる。同様に、A 社の残余標準体では、A 社の優良体基準は満たさないが、B 社の優良体基準を満たすものの割合が低くなることから、実際の死亡率は高くなると考えられる。
また、A 社では優良体が増加し、残余標準体が減少することになるので、実際の優良体の割合は予想よりも著しく高くなる可能性がある。
【加入時のトラブル】
営業員または代理店は、顧客に最も低い料率を提示する傾向にあるが、優良体の料率が提示されたにもかかわらず、申込者が優良体適格とならない場合には、時間と査定費用の浪費となるし、また、販売上のトラブルとなる可能性がある。