問題
商品毎収益検証の手法である「確率論的手法」および「決定論的手法」について、メリッ ト・デメリットを含め簡潔に説明せよ。 (平成17年度大問3(1)①)
商品毎収益検証の手法は、財務投資理論を生命保険商品に応用したものである。基本となる考え方は、将来のキャッシュフローを推定し、現在価値を求めるというものである。その将来のキャッシュフローを推定する方法として確率論的手法と決定論的手法の2つの手法があるが、生命保険会社の保険計理人の実務基準においては、将来収支分析を実施する際に、確率論的・決定論的手法の両手法によるアプローチが認められている。
【確率論的手法】
・非常に多くのシナリオや確率分布を仮定し、その仮定に基づき将来のキャッシュフローを推計する手法。
・シナリオ毎のキャッシュフロー(シミュレーション)から現在価値の期待値や分布などを求める方法、確率分布をもとに解析的に求める方法がある。
○メリット
・複雑な商品であっても、現在価値の分布・分散を把握する事が容易である。特に、オプション性のある商品や分布の裾野が広い商品に有用である。
・確率による重み付けが可能である。
○デメリット
・計算負荷が大きい。単純化されたシナリオでないと解析的に求めることが出来ない。
・結果の再現が出来ない、または再現が容易ではない場合がある。計算する度に結果が異なる場合には、客観性の担保が困難となる。
【決定論的手法】
・たかだか数本のシナリオを用いて、将来のキャッシュフローを推計する手法。
・シナリオの設定には、通常、最も確からしいシナリオとその周辺のシナリオおよび起こりそうにないシナリオが使用される。
○メリット
・計算負荷が少なく、簡便である。
・再現が容易であり、客観性を担保しやすい。
・極端なシナリオの与える影響を考慮しやすい。
○デメリット
・シナリオの違いにより計算結果が大きく異なる可能性があるため、シナリオが結論に大きな影響を及ぼす。
・現在価値の分布・分散が不明確である。確率による重み付けが出来ない。