問題
ソルベンシー・マージン総額(分子)と実質資産負債差額との違いの要因となる項目について説明せよ。(平成16年度大問3(1))
○ソルベンシー・マージン総額の構成項目
保険業法施行規則第86条に規定されている。(1)純資産の部の合計額から利益又は剰余金処分として支出する金額、繰延資産及びその他有価証券差額を除く
(2)価格変動準備金
(3)危険準備金
(4)一般貸倒引当金
(5)その他有価証券の評価差額×90%(含み損の場合は100%)
(6)土地の含み損益×85%(含み損の場合は100%)
(7)解約返戻金相当額超過額※1
(8)配当準備金の未割当額
(9)将来利益※2
(10)税効果相当額
(11)負債性資本調達手段等(劣後特約付き借入金・社債)(12)他の保険会社又は子会社等の資本調達手段の意図的な保有相当額
※1責任準備金のうち、解約返戻金相当額を超過する額。ただし、全期チルメル式責任準備金を解約返戻金相当額が下回る場合には、全期チルメル式責任準備金を超過する額。
※2有配当保険契約について減配することによりリスク対応財源として期待できるもの。
※3リスク発生時における課税所得の圧縮による税負担の軽減効果。
○実質資産負債差額の構成項目
保険業法第132条第2項に規定する区分等を定める命令第3条において、実質資産負債差額は「賃借対照表の資産の部に計上されるべき金額の合計額 ― 賃借対照表の負債の部に計上されるべき金額の合計額を基礎として計算した金額」と規定されている。
「資産の部に計上されるべき金額の合計額」は資産の額(満期保有目的の債券・責任準備金対応債券も含めた有価証券、不動産を時価評価)からその他有価証券の評価差額がマイナスの場合の当該部分に係る繰延税金資産を控除した金額。
「負債の部に計上されるべき金額の合計額を基礎として計算した金額」は、負債の額から以下の合計額を控除した金額である。
・価格変動準備金
・危険準備金
・責任準備金の解約返戻金相当額超過額
・配当準備金中の未割当額
・その他有価証券の評価額がプラスの場合の当該部分に係る繰延税金負債
上記を踏まえると、違いが生じる要因となる項目は以下の通りであることがわかる。
○ソルベンシー・マージン総額には含まれるが、実質資産負債差額には含まれない項目
・劣後特約付借入金・社債
・一般貸倒引当金
・将来利益
・税効果相当額
○ソルベンシー・マージン総額には含まれないが、実質資産負債差額には含まれる項目
・資本の部の内、利益又は剰余金の処分として支出する金額(翌期配当所要額、基金利息等)
・その他有価証券について含み益がある場合、含み益の90%を超える部分
・土地について含み益がある場合、含み益の85%を超える部分
・満期保有目的の債券・責任準備金対応債券の評価損益
・繰延資産
・他の保険会社の資本調達手段の意図的な保有相当額