問題
「剰余金の分配または契約者配当が公正・衡平である」とはどのようなことか簡潔に説明せよ。(平成10年大問3(1))
保険計理人の配当確認は保険業法第121条の中で契約者配当又は社員に対する剰余金の分配が公正かつ衡平に行われているかどうかを確認し、その結果を記載した意見書を取締役会に提出し、その後、その写しを金融庁長官(要確認)に提出しなければならないことが規定されており、法令により義務付けられた保険計理人の確認業務の一つである。
この公正かつ衡平に関して、日本アクチュアリー会が作成した「生命保険会社の保険計理人の実務基準」(以下、実務基準)では、以下の要件を満たすことであると定めている。
a.責任準備金が適正に積み立てられ、かつ、会社の健全性維持のための必要額が準備されている状況において、配当所要額が決定されていること。
b. 配当の割当・分配が、個別契約の貢献に応じて行われていること。
c. 配当所要額の計算および配当の割当・分配が、適正な保険数理および一般に公正・妥当と認められる企業会計の基準等に基づき、かつ、法令、通達の規定および保険約款の契約条項に則っていること。
d. 配当の割当・分配が、国民の死亡率の動向、市場金利の趨勢などから、保険契約者が期待するところを考慮したものであること。
公正・衡平な配当を実現するためには、個々の契約の剰余への貢献度に応じた、いわゆるコントリビューション原則に則った配当の割当・分配を行うことが基本となる。ただし、それ以前に、責任準備金が適正に積み立てられ必要な内部留保が行われていることが必要不可欠であり、会社の健全性確保が前提条件となることに注意しなければならない。
法令では、保険契約の特性に応じて設定した区分ごとに剰余金の分配または配当の対象金額を計算し、いわゆるアセット・シェア方式または利源別配当方式等規定された計算方式によって行うことが定められており、公正・衡平な配当を実現するためには、これらの基準及びその他金融庁長官が定める基準に従って適正な分配がなされることが必要となる。