事業継続基準の確認

問題

「生命保険会社の保険計理人の実務基準」について以下の問に答えよ。
(1)事業継続基準についてその確認方法を簡潔に説明せよ。
(2)事業継続基準未達となった場合、事業継続基準不足相当額を解消するために保険計理人が意見書に示すことができる経営政策の変更を5つ挙げよ。
(平成13年度大問2(2))

(1)
保険計理人は法121条第1項第3号の規定に基づき、将来にわたり、保険業の継続の観点から適正な水準(事業継続基準)を維持することができるかどうかを確認しなければならない。

【確認方法】
「将来の時点における資産の額として合理的な予測に基づき算定される額」が「将来の時点における負債の額として合理的な予測に基づき算定される額」を上回ることを確認する。
ここで、「将来の時点における資産の額として合理的な予測に基づき算定される額」とは、事業継続基準の確認に関する将来収支分析を行った場合の時価評価した資産から施行規則第87条第3号に定める額(資産運用リスク相当額)を控除した額をいう。
また、「将来の時点における負債の額として合理的な予測に基づき算定される額」とは、次のイとロの合計額をいう。
イ. 事業継続基準に係る額。すなわち、それぞれの保険契約について、全期チルメル式責任準備金と解約返戻金相当額のいずれか大きいほうの額を計算したものの合計額。ただし、影響額が軽微であると判断される場合には、それぞれの保険契約毎に、全期チルメル式責任準備金と解約返戻金相当額のいずれか大きい方を計算するのではなく、保険数理上妥当な範囲でまとめられた保険契約群団ごとに計算することができる。
ロ. 負債の部の合計額から、次に掲げる額の合計額を控除した額
(1)責任準備金
(2)価格変動準備金
(3)配当準備金未割当額
(4)評価差額金に係る繰延税金負債
(5)劣後特約付債務(ソルベンシー・マージン総額として計算される額に限る。)ただし、資産運用リスク相当額を限度とする。
収支分析はオープン型とし、分析期間は少なくとも将来10年間とし、分析期間中の最初の5年間の事業年度末において上記の確認を行う。

【シナリオ設定の概要】
○金利は直近の長期国債応募者利回りが横ばいで推移する。
○株式・不動産の価格や為替レートについては変動しない。
○外貨建資産運用収益については直近の為替レートを使用し、資産運用収益は以下の通り。
・ニューマネーは全て国内長期国債に投資したものとし、オールドマネーについては直近の長期国債応募者利回りで運用収益が得られるものとする方法。
・その他合理的な方法
○新契約高・新契約の商品構成比、保険契約継続率、死亡率など保険事故発生率、事業費については、直近年度又は直近年度を含む過去3年分の平均値とする。
○資産配分・資産構成比は直近年度における資産配分・資産構成比をもとに合理的なシナリオを設定する。
○配当金は、原則として直近年度の配当率が据え置かれたものとする。
○価格変動準備金、危険準備金の繰入れについては、原則としてそれぞれのリスク量に応じて、法定最低繰入基準を下回らない範囲で、計画的に繰り入れることとする。
○配当準備金繰入額のうち積立配当金として留保されるもの等以外は、原則として、契約者に支払われることとし、その額を資産から減少させることとする。
○配当準備金の残高は、原則として、前年度決算の配当準備金繰入額のうち積立配当金として留保されるものの、積立配当金の利息、及び、積立配当金の引き出し分等を考慮して、計算することとする。なお、積立配当金の引き出し分は、その額を資産から減少させることとする。
○劣後性債務・社債・基金については、その約定に従って、利息を支払うこととする。また、期限のあるものについては、期限到来時に約定に従って返済・償還または償却を行い、期限到来後は再調達しないものとする。
○その他の負債については、著しい変動の予想されるものを除き、原則として直近の残高がそのまま推移するものとする。

【1号収支分析との主な相違点】
3号収支分析は事業継続基準を維持できるかどうかの判定であり、責任準備金の適正性の確認である1号収支分析とは主に以下の点で異なる。
・すでに締結されている保険契約だけでなく、将来締結される保険契約も含めて実行する方法(オープン型の将来収支分析)を用い、クローズド型は原則認められていない。
・区分経理の商品区分毎ではなく、会社全体の資産、負債、純資産について行う。
・1号収支分析では対象外としてもよいとされている契約(変額保険や団体年金保険など)も収支分析に含める。
・1号収支分析(2)(決定論的シナリオ)は、資産の評価について原価法を適用するが、3号収支分析は、資産の評価は時価で行う。

(2)イ.一部または全部の保険種類の配当率の引き下げ
ロ.実現可能と判断できる事業費の抑制
ハ. 資産運用方針(ポートフォリオ)の見直し
二. 一部または全部の保険種類の新契約募集の抑制
ホ. 今後締結する保険契約の営業保険料の引上げ
なお、これらの経営政策の変更は、直ちに実行されるものでなければならない。

タイトルとURLをコピーしました