株式会社化の留意点

問題

相互会社が株式会社化(非相互化)を行う場合、アクチュアリーとして留意すべき点について簡潔に説明せよ。(平成19年度大問2(3))

○保険業法86条では『組織変更計画』中に、『保険契約者の権利に関する事項』を記載しなければならないとしている。
・株式会社化に際しては、相互会社の社員の法的地位という相互会社の基本構造を再理解することが必要であり、その中で特に留意すべき点は、配当受領権の保護の問題である。
・相互会社では剰余金の分配が社員に対してのみ行われるが、株式会社では、剰余金の分配は基本的には経営者の判断となり、株主と保険契約者の利益の相反が生じる。
・日本の株式会社化の事例においては、組織変更計画の中に配当方針を明記することで有配当契約者の保護を行なっている。閉鎖勘定を設けるなどの対応も考えられるが、それぞれのメリット・デメリットを比較、検討した上で決定する必要がある。

○社員の会社所有者としての地位の消滅に対する補償
・保険業法91条では、組織変更剰余金額を定めなければならないとしており、退社社員への割当てがないことに留意しなければならない。
・保険業法90条に基づき、組織変更計画の定めるところにより社員に対し株式又は金銭の割当てを行うこととなる。その分配は、社員の寄与分に応じてしなければならない。寄与分の計算では、会計方針や経験率の選定等の計算手法が結果に大きく影響するため、契約者間の公平性を阻害しないように納得の得られる合理的な計算を行うことに留意する。
また、割当てに際し、株式に代えて金銭等の交付を行う場合、会社が一括売却することによる流動性、ソンルベンシーへの影響についても留意が必要である。

○新規の資金調達を行う場合の留意点とそのときの既契約者の社員権との調和
・株式会社化と同時に資金調達を行う場合、株式市場の状況によっては、新規株式の価格が予定水準に達せず、計画通りに新規資金調達が達成できない危険が伴う。
・さらに、市場の状況によっては株式の評価額が社員の期待していた額よりも相当低くなることに留意する必要がある。

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