問題
変額年金保険の最低保証リスクを「保険リスク」「金融リスク」に分けて簡潔に説明せよ。
(オリジナル)
【保険リスク】
・死亡率
変額年金保険は特別勘定を原資産とするオプションのペイオフに対応する金融リスクが共通に関与するため、大数の法則が効かず、被保険者数増加によるリスクの収斂性が伝統的な保険と比べて劣後するという特徴を有している。このため、保険リスクの管理は慎重になることが求められる。しかし、販売側のニーズにより、投資信託に倣った年齢・性別に依らない「一律の最低保証料率(保険関係費用率)」や「職業のみによる危険選択」など、ミスプライシングのリスクは大きい。
・解約率
変額年金保険では、インザマネーの度合いが深くなるほど解約率が低下し、アウトオブザマネーの度合いが深くなるほど解約率が上昇する。契約者が解約する権利を最適行使すると仮定すると非現実的な最低保証料となってしまうため、ある程度非合理的な解約行動も織り込む必要があるが、解約率モデルの統計は死亡率ほど頑健でなく注意が必要である。
【金融リスク】
変額年金保険の最低保証は、保証機能のない通常の投資信託と保険会社の引受けるプットオプションによって構成される。これは、契約時点では、ヨーロピアンオプションのプット・コール・パリティからわかる通り、満期保証額をカバーできる割引債と超過収益獲得のためのコールオプションと等価である。こういったオプションが取引されていれば、割引債で静態的に金利リスクをヘッジすることができるが、実際には取引されておらず、リスク管理負荷は大きい。
また、変額年金保険のオプション料に相当する最低保証料は特別勘定残高の残高比例で日々徴収されるため、特別勘定資産が減少し最低保証の本源的価値が高まるほど(インザマネーになるほど)最低保証料収入が減少し、特別勘定資産が増加し最低保証の本源的価値が低下するほど(アウトオブザマネーになるほど)最低保証収入が増加するというミスマッチ構造がある。これは、保険料収入の一部を内部留保して将来のリスクに備えるという伝統的な保険数理の考え方だけではリスクコントロールがうまくいかない可能性があることを意味する。