価格変動準備金

問題

平成10価格変動準備金の対象資産・繰入基準・積立限度を述べよ。また、価格変動準備金の旧保険業法第86条準備金の考え方の相違点を説明し、価格変動準備金導入による生命保険会社への影響について所見を述べよ。(平成8年度大問2(2))

価格変動準備金の対象資産(保険業法施行規則第65条)
法第115条第1項に規定する内閣府令で定める資産は、次に掲げる資産とする。ただし、特別勘定に属する財産及び法第99条第1項に掲げる業務に係る資産は含まないものとする。
1.国内の法人の発行する株式その他の金融庁長官が定める資産
2.外国の法人の発行する株式その他の金融庁長官が定める資産
3.邦貨建の債券その他の金融庁長官が定める資産
4.外貨建の債券、預金、貸付金等外国為替相場の変動による損失が生じ得る資産その他の金融庁長官が定める資産
5.金地金

価格変動準備金の繰入基準・積立限度(保険業法施行規則第66条)
保険会社は、毎決算期において保有する資産をそれぞれ次の表の上欄に掲げる資産に区分して、それぞれの資産の帳簿価額に同表の積立基準の欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額以上を当該価格変動準備金として積み立てなければならない。この場合において、法第115条第1項の価格変動準備金の限度額は、毎決算期において保有する資産をそれぞれ同表の上欄に掲げる資産に区分してそれぞれの資産の帳簿価額に同表の積立限度の欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とする。

対象資産積立基準積立限度
第65条第1号に掲げる資産1000分の1.51000分の100
第65条第2号に掲げる資産1000分の1.51000分の75
第65条第3号に掲げる資産1000分の0.21000分の10
第65条第4号に掲げる資産1000分の11000分の50
第65条第5号に掲げる資産1000分の31000分の125

○価格変動準備金と旧86条準備金の考え方の相違
旧86条では実現キャピタルゲインについては旧86条準備金に積み立てることを原則としていた。新法ではこの考え方を廃し、株式等について、価格変動による損失に備えるものとして必要な額は、実現キャピタルゲインの有無にかかわらず、価格変動準備金に積み立てる一方、必要な価格変動準備金の積立を行なった後は、実現キャピタルゲインも、通常の収益として、その使途を限定しない(インカム配当原則の見直し)という考え方に改められた。

○価格変動準備金導入による生命保険会社への影響
旧保険業法では、保険会社に価格変動リスクが内在していても、実現キャピタルゲインが発生しなければ旧86条準備金を積み立てる必要がなく、リスク対応の面では、必ずしも十分でなかったが、新保険業法ではリスク性資産を保有するに伴い、価格変動準備金の積立が必要となることから、価格変動リスクへの備えが充実されることとなった。
また、保険会社がリスク性資産を保有する際には、価格変動準備金の積立の財源が必要となるので、保険会社の資産ポートフォリオについてもリスク管理の観点から検討することの必要性が高まった一方、価格変動準備金への積立分を超える実現キャピタルゲインについては契約者に還元できることから、キャピタルゲイン還元ルール等について慎重な検討が必要である。

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