有価証券の評価

問題

わが国の生命保険会社における有価証券の評価について説明せよ。(平成7年度大問2(2)改題)

従来の生命保険会計では、上場有価証券は低価法、非上場有価証券は原価法、債券は償却原価法でそれぞれ評価していたが、金融商品の時価会計導入に伴い、平成12年度以降、保有目的区分ごとに異なる評価方法を適用することとなった。
①売買目的有価証券:時価
主として短期間の価格変動に基づく利益を獲得するために保有する有価証券で、通常は同一銘柄に対して相当程度の反復的な売買が行われることを想定している。

②満期保有目的の債券:償却原価
時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息および元本の受け取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動リスクを認める必要がないことから、原則として、償却原価法に基づいて算定された価額を賃借対照表価額としている。このため、債券価格の変動が損益・純資産に影響しないというメリットがあり、生命保険会社のように長期の運用を行う場合に適している。ただし、償還期限まで保有する意思と能力を有することが条件となるため、例えば将来の資金繰り計画等からみて保有が困難と判断される場合は、「満期保有目的の債券」とは認められない。

③責任準備金対応債券:償却原価法
保険会社の負債の太宗を占める責任準備金は、長期間の債務であっても契約時に固定された予定利率で評価されている。このため、「その他有価証券」として債券等の資産側のみ時価評価した場合は、財務諸表上、純資産の額が大きく変動し、デュレーション・マッチングにより資産・負債の金利変動リスクを適切に管理していても、真の財務状況が反映されない恐れがある。一方、「満期保有目的の債券」に区分すれば評価差額を計上する必要はないが、売却が制限され、目標デュレーションの達成が困難である。その解決策として「責任準備金対応債券」の区分が導入された。
「責任準備金対応債券」を特定するための要件は以下の通りである。
(1)リスク管理を行うための管理・資産運用方針の策定
(2)管理・資産運用方針等を遵守する体制の整備
(3)小区分の設定と管理
(4)デュレーション・マッチングの有効性の判定と定期的検証
(5)責任準備金対応債券の範囲
「責任準備金対応債券」は、「満期保有目的の債券」と同様、償却原価法により評価される。目標デュレーションの達成を目的とする場合には、売却損益は売却年度の損益として一括計上する。そのほかの目的の場合は、売却益は債券の残存期間にわたり定額法で繰延処理し、売却損は売却年度の損益として一括計上する。

④子会社・関連会社株式:取得原価
⑤その他有価証券:時価
損益計算書に計上せず、賃借対照表の資本の部に計上する。

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