問題
保険種類別に事業費効率を把握することの目的、結果の利用方法について簡潔に説明せよ。(平成20年度大問2(2))
【目的】
事業費の支出形態は、募集組織の違い等により個人保険や団体保険等で異なる点が多く、また、付加保険料の体系も異なったものが採用されている。個人保険内においても、販売チャネル、貯蓄性商品と保障性商品、平準払と一時払の違いによる事業費の支出形態や付加保険料体系の違いがある。
複数の保険種類を扱う場合、保険種類間における事業費効率の差異やそれぞれの改善度を把握することは、契約者間の公平性を図る観点や保険会社の経営効率化の観点からも重要である。このために、予定事業費枠を保険種類別に算出する一方、事業費支出については、保険種類別の帰属が明確でない事業費(総務部門人件費等)も適切な配賦方法を用いて、事業費効率を把握することが求められる。
【利用方法】
○付加保険料の合理性・妥当性の確保、契約者間の公平性の確保
・保険料はその十分性を確保する必要があるが、付加保険料部分についてもセルフ・サポートするのが望ましい。ただし、単に費差のみで十分性を確認するのではなく、新契約費分の回収として解約失効益(解約控除益)等を加えて十分性を確認する方法も考えられる。
・保険種類別の事業費効率のデータをもとに新商品の付加保険料および営業職員給与の設定を行うとともに、販売後に事業費モニタリングを行い、付加保険料の合理性、妥当性、公平性の事後検証を行う必要がある。このサイクルの中で、必要に応じ料率改訂(十分性が満たされていない商品の付加保険料の引上げ等)を行うことが考えられる。
・また、保険種類別の事業費効率のデータは、契約者配当の設定に活用可能である。契約者配当を通じて実質的な保険料負担の軽減に寄与するとともに、予定事業費率の違い等に起因する事業費効率の違いを調整配当として還元することで、契約者間の公平性を図ることができる。
○保険会社の経営効率化
・保険種類別の事業費効率のデータは、経営資源の適正配分に活用される。例えば、事業費効率の悪化している保険種類について事務効率改善策を検討すること、総合的に収益の高い商品の販売量増大を目的として事業費の投入(営業職員給与の引上げ等)を行うこと、が考えられる。
・保険種類別の事業費効率を経年的に観測した結果を事業費予算に活かすことで、事業費支出の削減、業務運営の効率化を図る。また、これを保険料の引き下げにつなげることも考えられる。これらの取り組みにより、収益面・料率面からの他社競争力の確保が可能となる。