問題
予定事業費枠計算における「蔵銀枠」「利源枠」「純保枠」について説明せよ。
「蔵銀枠」は、大蔵省銀行局第1483号通達に定める方式に基づく予定事業費枠で、契約初年度に予定新契約費を全て費消し、これを全保険期間にわたって償却すると考えて計算する。特に、事業費の内訳(新契約費、維持費、集金費)毎に事業費率を見る場合にはこれを用いることが多い。
○メリット
・初年度に販売経費の多くが支出される保険会社の事業費支出の形態とリンクしている。
・したがって、新契約の多寡によって事業費率が左右されにくい。
○デメリット
・α全額を初年度に費消するという前提が事業費コントロールの指標として甘いという意見がある。特に、保険料収入を超えて予定新契約費が計上されることがある点で注意が必要。
・予定事業費枠の水準が単年度の販売業績に大きく左右される。
「利源枠」は、利源分析、特に費差益の計算に用いる予定事業費枠であり、予定新契約費のうち一定割合を契約初年度に費消し、それを一定期間で償却すると考えて計算した予定事業費枠である。契約初年度に費消する予定新契約費の一定割合をチルメル歩合という。これの償却期間をチルメル期間といい、現在は5年とされている。さらに、予定事業費枠を保険料の限度内に修正するために限度超過修正を行う。なお、チルメル期間終了後は、純保険料式による予定事業費と一致する。
○メリット
・解約控除を考慮すれば、財源対応がより実態に近い。
・保険料収入を限度とした枠計上
・業界共通の尺度として利用されている。
デメリット
・チルメル期間経過後、付加保険料が大きくなる点が不自然。
・2年以降チルメル期間内の予定新契約費αが通常マイナスとなる。
「純保枠」は、一契約について見たときに純保険料が一定、すなわち付加保険料も毎年一定(平準)であるとして計算した予定事業費枠である。
メリット
・平準純保険料式の責任準備金を積み立てる場合、財務会計上の財源対応が取れている。
・予定事業費枠の水準が単年度の業績に左右されず安定的。
デメリット
・事業費支出形態にリンクしにくい。
・販売業績が好調であれば事業費率が悪化し、費差損益も悪化する。