問題
静的なソルベンシーの検証・動的なソルベンシーの検証について説明せよ。(平成15年度大問3(1))
【静的なソルベンシーの検証】
・通常予測可能なリスクへの対応として、責任準備金を健全な保険数理・法令等に則り適正に積み立てることが第一義である。
・通常予測可能な範囲を超えるリスクに対応するため、狭義の責任準備金を超えて保有する支払余力として、広義の自己資本(ソルベンシー・マージン)を確保することが求められる。
・日本では、経営上の諸リスクに対し、どれだけのソルベンシー・マージンを確保しているかについて、フォーミュラ方式によるソルベンシー・マージン比率で検証を行っている。
・フォーミュラ方式による検証は、実行可能性・検証可能性に優れており、また、全ての保険会社を統一的に取り扱うことが可能なこともあり、客観的な指標として監督行政に活用されている。
・一方で、それぞれの保険会社固有のリスクが必ずしも反映されないことや、あくまで一時点(決算)の検証に過ぎないことから、動的なソルベンシーの検証と併せたチェックが必要となる。
【動的なソルベンシーの検証】
・将来のキャッシュフロー分析によるシミュレーションによるソルベンシー検証の方法であり、静的なソルベンシー検証を補完する位置づけとしての活用が可能である。
・会社の業務政策・投資戦略・ALM・市場戦略・配当・株主配当等を反映させることにより、会社固有のリスクに対するソルベンシー確保の検証を行うことができる。
・日本では、保険計理人の実務基準に基づき将来収支分析を実施することが規定されている。
・静的なソルベンシー検証に比べて汎用性が高い反面、計算実務が繫雑であること、計算結果の説明が必ずしも容易でないこと、恣意的なシナリオ設定が可能な側面があること等のデメリットがある。
・今後、新しいリスクの出現または発見・認識、新しいアクチュアリアルな技術の開発等の環境や状況の変化に応じて、継続的にその内容を見直していくことが必要になる。