問題
(1)標準責任準備金計算用の予定利率(以下、標準利率)の設定ルールについて簡潔に説明せよ。
(2)保険料計算基礎に用いる予定利率(以下、予定利率)の設定方法について簡潔に説明せよ。
(平成15年度大問4(2))
(1)標準利率は標準責任準備金の計算に用いる予定利率である。その算出方法は大蔵省告示第48号に定められている。当初は具体的な標準利率の数値が規定されていたが、現在は標準利率の見直しルールのみが規定されている。以下、直近の契約に適用される標準利率の見直しルールの概要を示す。(邦貨建保険のみ。外貨建保険についても概ね同様のルールが設定されているが、国債でなく社債をデータとして用いるなど若干の違いがある。)
【平準払】
(ア)基準日(毎年10月1日)の属する月の前月から過去3年間に発行された利付国庫債券(10年)の応募者利回りの平均値又は基準日の属する月の前月から過去10年間に発行された利付国庫債券(10年)の応募者利回りの平均値のいずれか低いものを対象利率とする。
(イ)対象利率を利率ごとに区分し、各区分について安全率係数を乗じた値を合計した利率を基準利率とする。
(ウ)基準利率が基準日時点で適用されている標準利率と比較して、0.5%以上乖離している場合には、基準利率に最も近い0.25%の整数倍の利率を標準利率とし、基準日の翌年の4月1日以降締結する保険契約に適用する。
【一時払終身保険(第1号保険契約)】
(ア)以下のいずれか低い方を対象利率とする。
①基準日(毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日)の属する月の前月から過去3月間に発行された利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値に基準日の属する月の前月から過去3月間に発行された利付国庫債券(20年)の流通利回りの平均値を加えて2で除した値
②基準日の属する月の前月から過去1年間に発行された利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値に基準日の属する月の前月から過去1年間に発行された利付国庫債券(20年)の流通利回りの平均値を加えて2で除した値
(イ)対象利率を利率ごとに区分し、各区分について安全率係数を乗じた値を合計した利率を基準利率とする。
(ウ)基準利率が基準日時点で適用されている標準利率と比較して、0.25%以上乖離している場合には、基準利率に最も近い0.25%の整数倍の利率を標準利率とし、基準日の3月後以降締結する保険契約に適用する。
【一時払養老保険(第2号保険契約)】
(ア)以下のいずれか低い方を対象利率とする。
①基準日(毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日)の属する月の前月から過去3月間に発行された利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値
②基準日の属する月の前月から過去1年間に発行された利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値
(イ)対象利率を利率ごとに区分し、各区分について安全率係数を乗じた値を合計した利率を基準利率とする。
(ウ)基準利率が基準日時点で適用されている標準利率と比較して、0.25%以上乖離している場合には、基準利率に最も近い0.25%の整数倍の利率を標準利率とし、基準日の3月後以降締結する保険契約に適用する。
(2)【基本的な考え方】
予定利率は、現時点における自社の運用利回りや過去の運用利回りの推移をもとに、今後の運用方針を加味した将来の運用利回りを予測し、決定される。今後の運用方針を考える上では、該当する保険契約の解約等のキャッシュアウトなど、資金特性も考慮する必要がある。また、死亡率や事業費支出などと異なり、運用利回りは、リスク分散やコントロールが難しく、将来的な予測も決して容易でないことから、予定利率の設定は他の基礎率に比べて特段の配慮が必要である。
【保険期間・保険料払込方式と予定利率の関係】
営業保険料は、死亡保険金などの保険給付の対価として契約時に約定されている価格であり、予定利率は保証利率としての性格を有する。将来の運用利回りの予測は、保険期間が長期になるほど予測が困難になることから、利率の変動に影響を受けやすい貯蓄性の高い商品、特に長期にわたり保険料のキャッシュインフローが見込まれる分割払の保険契約などでは、予定利率を保守的にする必要がある。
一時払養老などの一時払の貯蓄性商品は、新契約時にのみキャッシュインフローが生じることから、当該時点での投資資産の運用利回りを基準として、予定利率を設定することが合理的である。その他、市中金利等の変動にキャッチアップするため、新契約の保険料率を機動的に変更できる体制を整えておくことが好ましい。
【有配当保険・無配当保険】
有配当保険の場合、利率を保守的に見込んだことによる調整を配当により実施することができるが、無配当保険の場合そうした仕組みがない。合理的に考えれば競争上の理由から、無配当保険の予定利率は有配当保険のそれに比べて、より実勢に近い設定が必要である。
また、配当制度がない無配当保険は有配当保険に比べ利率が硬直的であるので、金利の変動化では(新規の契約に対して)有配当保険に比べて機動的な予定利率の変更ができるよう体制を整えておくことが望ましい。