問題
(1)医療保険におけるトンチン性の問題とは何か説明せよ。
(2)医療保険におけるトンチン性の問題を解決する方法を3つ示せ。
(平成13年度大問2(1)改題)
)(1)医療保険等では医療保障部分の発生率が高年齢ほど高くなり、加入年齢・保険期間によっては医療保障部分の責任準備金が高額になることがある。医療保障要素を重視した商品で死亡保険金を小額に抑えている場合、保険期間の後半で責任準備金額が死亡保険金額を上回ることがある。このように保険期間中に責任準備金額が死亡保険金額を上回ることを死亡保険金に関する「トンチン状態」という。
こうした状態では、以下のような問題が生じる。
・死亡危険の近づいている契約者は、解約した方が受取額が大きいことから解約の支払いを請求することとなり、死亡保険金を支払う以上に支払いが多くなる。このような支払いの増加は保険料計算上考慮されていないため、収支の悪化を招くこととなり健全性が損なわれる。
・解約返戻金額が死亡保険金(給付金)額を上回ることを知っているかどうかで受取額が異なることとなり、保険契約者間の公平性が保たれない。
・保険契約を継続して死亡保険金を受け取る意味がなくなり、解約が促進されかねない。そして、保険料計算や責任準備金評価時に想定し許容していた以上に解約が起こると、当初の予測収益が得られなくなり、残存の保険群団の維持に支障をきたす恐れがある。
(2)
・予定解約率を用いて解約返戻金をデザインする。
例えば、予定解約率を用いて解約返戻金を死亡保険金と同一とし、死亡保険金と同一の額を解約のときに「給付」する。この場合、予定解約率を適正な水準に見込んでおく必要があり、その見積もりいかんでは大きな収支損が発生する可能性がある。
・解約返戻金を死亡保険金(給付金)額以下に強制的に抑える。
保険料計算に解約率を織り込んでいない場合は、解約返戻金の水準引下げが保険料の引下げに貢献せず、解約した際の当該部分の解約益は、過去の事業費支出の精算とは無関係なものとなる。この解約益は、将来生じるかもしれない群団としてのコストを残存契約群団だけではなく、脱退契約群団にも負担してもらうという考え方に基づいて精算されるものと考えられる。
・該当するケースが発生するような場合は規定等で取扱範囲を制限する。
この方法は抜本的な対策ではなく、ごく一部分で生じる場合に緊急避難的に該当ケースを除外するものであるが、契約締結可能範囲のほとんど全てで生じる場合には、商品の売り止めや商品改訂が必要となる。