利源分析の意義

問題

金融庁提出の利源分析について、その意義と概要および結果を評価する際に留意すべき点を簡潔に説明せよ。(平成25年度大問2(2))

【意義】
・生命保険会社の剰余金は損益計算書において一応の源泉を知ることができる。しかし、経営目的からも保険会社を監督する立場からも、単に会社全体の剰余を知るだけでは不十分であり、計算基礎率の妥当性や利源毎収益の状況を把握すること、及び契約者配当の公平性確保に資すること等のために、この剰余を利源別に分析することが必要である。
・利源分析の手法は様々であり、その目的に応じた分析を行うことが必要である。なお、保険会社監督の立場からは、各社の独自の基準による利源分析を提出させても比較が容易にできないため、監督用として基準・様式を定めている。

【概要】
・決算状況表の利源分析は、保険料計算基礎率による5年チルメル基準で行われており、「当期末処分剰余金(株式会社の場合、繰越利益剰余金及び契約者配当準備金繰入額の合計)」を「費差損益」、「死差損益」、「利差損益」、「責任準備金関係損益」、「価格変動損益」、「その他の損益」の6つの利源の損益に分け、利源毎に収支状況を把握する分析手法である。
・利源分析は、基本的に損益計算上の各項目を使用して計算するが、損益計算書上に現れない項目(予定事業費、予定利息、諸積増等)も使用する。

【結果を評価する際の留意点】
・例えば、死差損益の向上を目的として診査体制の強化や診査精度の向上を図ったり、利差損益の向上を目的として資産運用部門の人員を増強する等した場合、コストは費差損益に賦課される一方で、結果としての果実は死差損益や利差損益等の増加という形で表れる。会社のコスト・コントロールという観点からは、そのまま費差損益を使用するという考え方もあるが、実際の収益の源泉を分析するという観点からは、費用についても各々の利源に賦課した上で別途分析するということも考えられる。
・新契約の増加がその年度の費差損益を悪化させたり、解約失効の減少が解約失効益を減少させるといったように、現行の財務会計においては経営施策とその結果の収益に乖離が生じてしまう。単年度の利源別損益だけでなく、エンベディッド・バリュー等の将来収益現価的な指標をあわせて分析することも必要である。
・変額年金の最低保証に係る標準責任準備金の積立や第三分野ストレステストにおける追加責任準備金の積立は、全て責任準備金関係損益に計上される。一方で、各責任準備金の積立が生じた原因という側面からは、前者は経済環境の悪化であり、後者は発生率の悪化であることから、発生原因という観点からは、それぞれ価格変動損益、死差損益に含めて分析することも考えられる。
・ある程度の区分で保険種類毎に利源分析することも必要である。死亡保障と入院保障を区分したり、低解約返戻金型商品を別把握すること等が考えられるが、事業費等の按分方法は様々であるため、商品特性や分析目的により判断していくことが必要となる。

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